体の健康を維持するための必須栄養素の中にビタミンがあります。ビタミンには様々な種類がありますが、その中でもビタミンDは、主にカルシウムのバランスを整えて骨の健康を保つために働いています。そして、免疫を調整する働きもあることから、風邪やインフルエンザをはじめ、肺炎や気管支炎といった感染症の予防も期待される栄養素です。
ビタミンDとは?
ビタミンは、脂溶性ビタミンと水溶性ビタミンの2種類に大別されますが、ビタミンDは、水に溶けにくく、油に溶けやすい性質を持つ脂溶性のビタミンです。油と一緒に摂取することで吸収が良くなりますが、水に溶けやすく体外に排出されやすい水溶性のビタミンと違い、体内に蓄積されるため、過剰に摂取しすぎると体に変調をきたしてしまうことがあります。身近な食品では、天日干しシイタケやきのこ、海藻類などにはビタミンD2(植物性)、鮭などの魚肉や肝臓、卵黄にビタミンD3(動物性)が含まれています。
ビタミンDはこれらの食品から摂取する以外に、太陽光の紫外線を浴びることによって、必要量の80%~90%を体内で作り出すことができるという特徴があります。
ビタミンDの働きについて
ビタミンDは、小腸など腸管内でのカルシウムとリンの吸収を促進します。骨組織においては、血液中のカルシウムやリンの濃度を調整し骨に蓄積するため、丈夫な骨の形成に役立っています。また、免疫機能を調節する働きがあり、体内に侵入してきたウイルスに対して過剰な免疫反応が起こらないよう、必要な免疫機能を促す役割を果たしています。そのため、風邪やインフルエンザ、肺炎や気管支炎といった感染症の予防が期待されているのです。
ビタミンDが不足するとどうなる?
ビタミンDが不足すると、カルシウムの吸収低下や骨の代謝異常を招き、骨や筋肉が弱くなる傾向にあります。子どもの場合ではくる病、大人では骨軟化症や骨粗しょう症になるリスクが高まります。特に、更年期をすぎた女性や高齢者は、積極的にビタミンDを摂取することが大切です。閉経後の女性は、女性ホルモンの分泌が急激に低下することによって、骨がスカスカの状態になっていってしまいます。これは、これまで骨を壊す細胞と骨を作る細胞とが備わり、毎日のように古くなった骨を新しい骨に置き換えるというサイクルのバランスが、女性ホルモンの低下で崩れてしまうためです。
高齢者の場合では、若い頃よりも食事量や運動量が減るといった生活習慣の変化などによって骨密度の低下が起こり、骨がもろく、転倒や骨折をしやすくなったり、寝たきりの要介護状態になってしまうこともあります。特に1年の内、紫外線量の少なくなる冬は、体内でのビタミンD生成も低下することから、血液中のビタミンDの濃度が低くなります。インフルエンザの流行時季でもあるため、ビタミンDを積極的に摂取したり、意識的に紫外線を浴びるようにして予防していきましょう。流行前からビタミンDを摂取していくことで、インフルエンザの罹患率を下げられることが研究で分かっています。
ビタミンDを摂取する方法は?
散歩やウォーキングで日光浴
ビタミンDは1日15~30分程度、手首から先が日光に当たることで、十分な量が生成されます。ただし、高齢者は若い人よりも皮膚で出来にくいため、少し長めの時間日に当たると良いでしょう。日の当たる場所にとどまって日光浴するのも良いですが、健康的な体作りのために、散歩やウォーキングでの日光浴がおすすめです。なお、長時間紫外線に当たると、シミやシワなどの肌トラブルの原因になります。適度な時間の日光浴、そして気になる方は日焼け止めクリームを塗って日光浴するとよいでしょう。
ビタミンDを多く含む食品の摂取
散歩やウォーキングでの日光浴とあわせて、ビタミンDを多く含む食品を摂取して補いましょう。ビタミンDを多く含む食品は、天日干しシイタケやきのこ、海藻類、鮭などの魚介類に多く含まれています。特に魚の皮の部分に多く含まれていますので、皮も残さずに食べると良いでしょう。また、魚に含まれるEPAやDHAは、血栓予防や中性脂肪を減らす働きがあります。毎日の食生活に取り入れていきましょう。
ビタミンD含有サプリメントの摂取
きのこ類や魚介類など、食事からの摂取が難しい場合には、普段の食事にビタミンD含有サプリメントをプラスしてみましょう。ただし、ビタミンDには、体内に蓄積しやすい性質がありますので、一度に大量に摂取することは避け、通院中で内服薬を服用中の方や尿路結石の既往のある方は、必ず医師に相談の上、用法、容量も守って摂取しましょう。
まとめ
ビタミンDは、健康的な骨づくりを支えるだけでなく、免疫機能を調整する役割も果たす大切な栄養素です。日頃から日光にあたる時間の少ない方や、きのこ類や魚など、ビタミンDを含む食品をあまり摂っていない方は、自身のライフスタイルに合った方法で積極的にビタミンDを摂取し、風邪やインフルエンザを予防していきましょう。